2018年 ブドウの収穫
ブドウの収穫番号 54
マウロ・シッリの収穫番号 35
当たり前が稀有になる
冬に雪が降ると、春はとても穏やかです。朝方は爽やかな香りに包まれ、晴れた午後のブドウ畑を夕立が驚かせます。
夏は暑くとも、夜中に降った雨がひんやりと涼しさを運んできます。
さて、もしこんな季節の巡りが当たり前であったとしたら、そこはきっと楽園に違いありません。そしてそんな当たり前に慣れてしまえば、自分達が楽園に住んでいることさえも忘れてしまうことでしょう。だからこそ、稀有な出来事や予想外の出来事は有難いのです。そうした試練を乗り越えて幸運にも絶妙なバランスを見つけることができれば、その喜びもまたひとしおです。
異常な気象ゆえにすばらしい収穫となった年が2014年、2015年、2017年と続いてから、2018年は朝のそよ風、凛とした空気、澄み渡る空と実に素晴らしい年になりました。
そして2018年は、わが社の全ブドウ畑35ヘクタールを有機栽培に転換するという重要なステップの年でもありました。
20年以上に渡り、ウドンコ病とベト病を管理するための最低限の化学薬品だけを使用し、除草剤を一切使用しない環境にやさしいブドウ栽培を目指してきた私達でさえ、始めはやはり困惑したのも事実です。
栽培には、不要な芽を摘み取る芽かき(摘芽)、北側列の葉の摘み取り、必要な場所の房の間引き(摘房)など、大変な作業が伴います。
けれども、わが社のこの新しい栽培哲学を信頼してくださった方々の協力により、見た目にも美しく食べても美味しい健康なブドウを実らせることができました。
結果としては、栽培作業もその成果も十分満足いくものになりました。
7月末は降水量が少なかったのですが、すぐ後のお盆の時期には雨が降りそれも回復しました。9月には晴れた日が続いたものの夜間は気温がぐっと下がったため、ブドウのテルペン類が成熟して果実の酸味と香りが保たれています。
そして生産量が伸びなかった苦しい年月を経て、量的にもようやくバランスの取れた収穫を迎えることができました。
だからこそ、稀有な出来事は有難い
Mauro Sirri マウロ・シッリ